NPO法人日本サーバント・リーダーシップ協会

第4回:早稲田大学ラグビー部連続日本一の秘密

先日、2年連続日本一を達成した早稲田大学ラグビー部の中竹監督とお会いした。中竹監督は自称「日本一オーラの無い監督」だ。
確かに一見すると、いかついラグビー部の猛者たちを率いているボスには見えない。普通の優しいサラリーマン然としている。

実際に中竹監督は、3年前に就任するまではコンサルタント会社でサラリーマンをしており、ラグビーの現場から離れていた。
だから、毎年行われるルール改正や最新の戦術、練習方法なども把握していない。自称「日本一ラグビーを知らない指導者」でもあった。

中竹監督の前任者はカリスマとして名高い清宮監督である。優勝から長年見放されていた部を、
指導していた5年間で3度の優勝に導いた名将である。清宮監督は天才的な戦略・戦術を繰り出すまさにカリスマだ。
リーダーが全てを考え、全てを決定し、命令する。メンバーはただリーダーに従う。これがうまく行くには一つ条件がある。
それはリーダーが決して間違えないことである。そして、それができるのは天才のみである。

「あんなに的確な戦略や戦術を生み出せる天才は、ラグビー界でも清宮さん一人しかいない」と中竹監督は言う。
ところが、清宮監督ほどの才能が無いにもかかわらず、彼と同じようなリーダーシップを発揮したがり、
結果うまくいかない指導者が非常に多いらしい。

中竹監督は自分は天才ではないと自覚し、逆のリーダーシップを発揮した。
それは、選手を主役に据えて監督は選手を支えるというリーダーシップ、つまりサーバントリーダーシップである。
選手自身が練習方法、戦略、戦術を考えるのだ。監督は選手たちが正解を導きだせるように思考方法やコミュニケーションの方法などを指導しサポートする。しかし、選手たちは自分達で考えることに慣れていなかった。清宮監督時代には自分で考えなくてもカリスマの指示に従えば勝てたからだ。
そのため、最初は困難を極めたが徐々にこの指導方法が浸透し、2年連続で日本一を達成するまでになった。

ラグビーとビジネスの世界は違う。しかし、この環境変化の激しい時代に決して間違えない戦略・戦術を示せる天才がビジネス界に果たしてどれだけ存在するだろうか?
あなたがもし天才でなければ、リーダーシップのあり方を考える必要があるかもしれない。

「出会い」2009年11月5日号(経済界倶楽部発行)     真田茂人

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