NPO法人日本サーバント・リーダーシップ協会

第5回:星野リゾートの秘密。なぜ再生は成功するか

先日、不振のリゾート施設の再生を次々ど成功させている星野リゾートの星野社長にお会いした。
以前にも講演でご一緒したが、素晴らしい経営者である。そして世間の多くの経営者と言うことが随分違う。

例えば「従業員には意思決定のプロセスに参加してもらう」こと。その極め付けは、なんと経営会議に誰でも参加できるのだ。
もちろん、自由に意見を言えるわけではないが、話は自由に聞ける。なぜこのようなことをするのだろうか。
その理由は、従業員が抱く不満のひとつに「上から降りて来る決定事頂に納得がいかない」というのがあるからだ。
人は誰しも、押し付けられたと感じることは受け入れ難い。しかし、意思決定の場に自分もいることによって、
なぜそういう決定が下ったのかを知れば腑に落ちるのだ。

また「究極のフラット」と呼ばれる人事制度も他に例がない。
星野リゾートではプロジェクトリーダーを立候補・選挙制にしている。これは、従業員に自己責任感を持ってもらい、
自律型人材にするための手段である。

星野社長は明確な戦略・戦術を待った優れた経営者であるが、一方でそれだけで人が動くわけではないことも知っている。
従業員一人ひとりが動いてくれないと戦略・戦術は実現されない。ビジネスにおける主役は従業員であり、
彼らが活耀できる舞台をつくり、彼らの活躍を支えるのが経営者であるというサーバントリーダーシップの考え方がベースになっている。

だから、倒産したリゾート施設を再生する時、星野社長が最初にすることは、その施設の従業員の話を聞くことである。
目的は現揚で起きている事実を把握するだけではない。従業員の気持ちを大切にしていることのメッセージでもあるのだ。

人は理屈では動かず、感情に大きく影響される。いくら経営者の命令だからといっても、納得できなかったり、
そもそも「貢献したい」と思わなければ、従業員は一生懸命には取り組まない。たとえ命令に従ったとしても、
嫌々取り組んでいては大した成果は期待できない。成果を上げるには、一人ひとりの従業員が熱心に取り組むように、
彼らを支援する必要があるのだ。

「出会い」2009年12月5日号(経済界倶楽部発行)     真田茂人

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