NPO法人日本サーバント・リーダーシップ協会

第6回:なぜ御用聞き営業から3千億円企業を作れたか

先日、加賀電子の創業者である塚本会長とお会いした。元々、加賀電子は「自分の給与を稼げれぱいいか」と始めた御用聞き営業の個人事業にすぎなかったが、今や国内外で64社のグループ会社を擁し、3千億円を売り上げる電子部品商社になった。

なぜ、ここまでの成長ができたのか。電子部品という商材やビジネスモデルの時代性、そして会長の先見性はもちろんだが、
会長のリーダーとしてのあり方にも秘訣があったように思えた。その秘訣をご紹介しょう。

①会社は皆のもの「創業者は私だが、会社は私のものではない。皆が稼ぎにくる場所、つまり皆のものだ」と言う。
そのため、細かい経費も含めてすべて公開したガラス張り経営をしている。だから社員が当事者意識を持ち、結果として全員経営になる。

②公私混同しない「公私混同して贅沢しようと思ったらいくらでもできたが、しなかった。そういう人が周りにいっぱいいたが、
そういう人はほとんど伸びなかった。そして多くの人がいなくなった」「お金は大切だが、お金ほど人をダメにするものはない。
己を虚しくする」と言い切る姿に衝撃を受けた。

③最初に性善説ありき。社員を信用するやりたい人に任せる。若い人たちの発額力や行動力を信じて任せてみる。
失敗したら運帯責任で、任せた側も一緒に責任を取る。実際、グループ会社の社長たちも皆、一度は失敗した人ばかりだそうだ。

④連帯感銀座のクラブで飲むより、社員と居酒屋で飲む。全員経営をするには価値観を共有して連帯感を持つ必要がある。
だから、一緒に食事をとったり飲んだりして語ることを大事にする。自宅に社員をよく招く。会長がまだ帰宅していなくても、
社員たちが先に飲んでいたりする。そういった積み重ねが、本来一匹狼の野武士集団に連帯感を生む。

このように、塚本会長のリーダーのあり方は明らかに、平均的な経営者のそれとは違う。
これはまさに社員を主投として支えるサーバントリーダーであり、サーバントリーダーシップが3千億円の企業グループをつくり上げたと言えよう。

「出会い」2010月5日号(経済界倶樂部発行)     真田茂人

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