NPO法人日本サーバント・リーダーシップ協会

第10回:岩崎弥太郎と坂本龍馬の違い

NHKの大河ドラマ「龍馬伝」が話題になっている。昨年から3カ年で放送されている「坂の上の雲」も同様に、幕末から明治にかけての人間ドラマはやはり非常に面白い。300年の江戸幕府体制が様々な行き詰まりを見せた混迷の中から変革が起きたわけだが、考えてみれば今の日本も似たような社会情勢とも言える。不況という混迷の中にいるからだ。

混迷の時代を切り開くリーダーにはどんな資質が必要なのであろうか。こうした時代だからこそ「強烈なリーダーシップで有無を言わさず人を引っ脹っていくカリスマ型リーダーが必要だ」という声をよく聞く。

龍馬伝でも異彩を放っている岩崎弥大郎は、まさにカリスマであり超独裁型のリーダーとして三菱グループの前身となる三菱蒸気船会社を創設した。確かにエネルギーの塊のような弥太郎だからこそ、地下浪人から成り上がることができたのだ。 しかし、企業としての発展を方向付けたのは、実は2代目である弟の弥之助だという。 弥太郎は50歳で他界したが、「それ以上長生きしていたら、多分、三菱は潰れていただろう」とも言われている。

面白いのは、この激動の時代の最大のヒーローである坂本龍馬のリーダーシップは独裁型とは全く異なることである。 龍馬は大きな志を持っていたが、自分と意見の違う人間を力で押さえ込んで無理矢理従わすようなことはしなかった。むしろ、様々な人と会い、率直な意見を交わし、相手の利になるような交渉をし、合意を得て人を動かしていった。人を生かす方法で粘り強く交渉を重ねていった。そのために、自ら身を粉にして日本中を駆け巡った。

ビジョンを明確に示し、関わる人たちが活耀しやすいように貢献していく。これはまさにサーバントリーダーシップである。混迷の時代、激動の時代に活耀したのは、カリスマリーダー、独裁型リーダーばかりではない。人に仕えるリーダーも活躍していた。あなたは、この混迷の時代をどんなリーダーとして乗り越えますか?

「出会い」2010年5月5日号(経済界倶楽部事務局発行)      真田茂人

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