第14回:サッカー日本代表岡田監督が望んだチーム
早いもので、日本サッカー協会ではW杯ブラジル大会に向けて次期日本代表監督候補選びに入っている。世間の関心はもうサッカーから離れているが、今年最大のイベントであったW杯をいま一度振り返ってみたい。
この大会前後において岡田監督の評価は変わった。これほど短期間で評価が変わったリーダーも珍しいだろう。今回、本番直前で大胆にチームの戦略を変えたことが話題になった。後に選手が実情を明かしている。
この戦略変更は岡田監督のアイデアではなく、選手からの提案だったそうだ。韓国戦に負けた後、選手同士が話し合ったという。前線からのプレスをかけるやり方では、体力がもたず、カウンターをくらった時に対応できない。だから、守備的布陣に転換すべきだと。岡田廉督は選手からの提案を受け入れた。
選手たちは、自分たちで主張した以上は責任を持って成功させないといけない。そのためには練習も徹底させないといけないと決意したという。もしかしたら、これが岡田監督が望んでいたチームの状態だったのかもしれない。
岡田監督はW杯後の講演で、横浜マリノスの監督時代の出来事をこう語っている。「自分の戦略が当たって勝つことを何度か繰り返すと、選手は『おお、なるほど。監督の言う通りにやったら勝てるなあ』と思うようになります」。
ところが、困ったことが起こったという。「監督の言った通りにやったら本当に勝つな』ということで、だんだん一番大切な中央を見ずに、ポールを持ったらロボットのようにサッサとサイドに出すようになったんです」。
つまり、短期的な結果を求め、一方的な指示命令を続けた結果、考えない選手が育ち、本質的な強さを失っていったのだ。
これは企業にもあてはまる話である。長期的な成功を実現するには、社員がロボットではダメであり、そのビジネスにおける本質的な強みを身に付ける必要がある。そのためには、一方的な指示命令ではなく、自律性を引き出すことが重要だ。そうやって社員の能力を高めることはサーバントリーダーの特徴でもあるのだ。
「出会い」2010年9月5日号(経済界倶楽部事務局発行)
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